思い起こせば、つい1ヵ月前。社員旅行ではじめて訪れた中国・上海の都会ぶりに驚いたばかりです。それが間髪入れずに先週、またしても上海浦東国際空港に降りたっているのは、忘れ物を取りに来たような気分…といえばよいのでしょうか。
「我がオフィスのある隣町、大須だってこんな頻度では足を運んでいない」
記憶に新しい道脇の風景を眺めて、やや食傷気味のそんな思いがよぎったのは初日だけのことでした。
訪れたのは、ムシャク・ドングアン・シンチェン‥‥。私にはどんな漢字を書けばいいのかさえもイメージがつかない未知の土地ばかりです。少しでも中国でモノづくりに関わっていらっしゃる製造関連の方であれば、私の無知を嘲笑されてしまうレベルに違いありません。
しかし、私の目にはそれらの町の風景が醸し出す複雑さがたいへん新鮮に映ったのです。
市場開放と規制社会、発展スピードと市民のアンバランス、富と貧困‥‥。
ニッポンの高度経済成長時代をオトナとして味わっていないことを残念がっていた私にとっては、ワクワクしないはずがありません。
上海の給与水準は50%アップだといいます。成長を遂げた上海の労働者の人たちにしてみたら当然の要求なのでしょうが、その事実が経営を苦しめているようです。
路面状態の悪い高速道路をぶっ飛ばし2〜3時間のムシャクの町であれば、人件費は3分の1以下で済むのだそうです。
大通りには高層住宅もあります。日本人が多い高級ホテルあるようです。が、一本路地に入れば、赤い土埃の舞う道路、錆と埃で汚れた3輪バイクトラック、路肩でのバラック商店‥‥。人件費の安いこともなんとなく頷けます。
「この田舎町で生まれ育ち、ここで一旗あげるとすれば何をしてやろうか」
ムシャク(無錫)の町で、仕事のことを考えていました。
(つづく)