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オフィストイレの付き合いはどこにある?

私の会社はグッと小粒なので、オフィスビルの1つのフロアに5社が共存しています。すると、企業と企業にもご近所づきあいが生まれます。
共用部分の使用には神経を使ったり、ビルの真ん中を陣取る廊下ですれ違うヒトには挨拶をするとか、騒音を出さないとか、廃材の処分には気を配るとか…。ま、それらのことはアタリマエにやっているわけです。

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その日私はトイレでしゃがんでいました。ひとたびドアを閉めきって小さな空間にしゃがみ込むと、私はついつい長期滞在してしまう悪いクセがあります。その狭い個室の中でシゴトの資料を読み解いたり、時には文庫本を持ち込んだり。
そんなところでいいオッサンがケツを丸出しにしてだらしない姿で落ち着いているとは、なんと無様なことか。だれも想像したくないよな‥‥という罪悪感のようなものが心のどこかにあるのでしょうか。隣の個室にヒトが来たりすると、リラックス空間は一転して緊張感が張りつめます。意味もなくジッと音を出さないようにしています。用を足す以外の何かをトイレに持ち込んでいることがバレないようにしたい、という意識が働くのです。


こんなリラックスと緊張を交互に繰り返しながら、今日も個室で籠もっていました。そしてまたしても誰かが隣の個室にやってきた気配が…。先方は薄っぺらな板一枚を隔てた向こう側でケータイをチクチクといじっている音が聞こえてきます。
「ドコモじゃないな」
私は察します。ドコモはこの場所では圏外になってしまうことなど、すでに確認済みです。…というようなどうでもいいことを考えながら、相手が去っていくのを待ちました。チェックしなければいけない原稿の続きをその場で読みたかったのです。


そしてとうとう私はその闘いに勝ったのでした。ジッと物音を立てずにガマンしていたおかげで、敵は先にトイレを出たのです。
しかしその瞬間、あらぬ事態が発生しました。先達者がその場を立ち去る際に電灯のスイッチを消してしまったではありませんか。窓のないトイレは一瞬にして真っ暗闇です。省エネ配慮のための「使用後は電気を消してください」という貼り紙の効果は絶大で、たいていのヒトはそれを守っています。
しかし、私の存在に気づかなかったはずがないだろぉが!くそおおお。
暗闇の中で狼狽していること10数秒。無限の長さに感じました。が、再びドアが開き、小さな声がしました。
「…すいませんっしたぁ…」
そうささやいて電気のスイッチを再び入れてくれたのです。ケータイメールの氏が気づいてくれたのでしょうが、ズボンをズリ下げたままで、面と向かって文句を言うわけにも行かず、かといって「気づいてくれてありがとうございます」とお礼を大声で言うのも、かなり恥ずかしい。


で、ついつい息を吐く程度の「スゥ〜ッ」という曖昧な挨拶で、先方に感謝の合図を送りました。
しかし電気を付けてくれたのが新規の訪問者でなくてホントによかった。真っ暗闇の個室に籠もっているオッサンって、かなりヤバいじゃありませんか。
ああ、テナント同士のコミュニケーションはホントに難しい。

コメント (5)

hana:

最後のシーンがたまらなくおもろい。
パソコンの前でひとりニヤついてしまいました。
企画室でそんなドラマが起こっていたとは…

miwako:

ご無沙汰してます。美和子です。
瀬戸の山奥に潜んでいるので、ひさびさにインターネットなるものをしてブログを見たらウ○コ話…失礼…リアルなトイレ内の実況中継で笑わせていただきました。「胸キュン」な話をしていた頃が懐かしいです。

伊藤秀一:

恋した胸キュンな話ではなく、
暗闇の孤独な話しかできないオジサンになってしまい、すみません。
もうちょっと「いい会社はどこにある…」に
絡んだ話をしようと思っているのですが、つい…。
瀬戸に籠もって育児もいいですが、
たまにはお顔を見せてください。

iori:

社長がブログでこういうコト書くのって、
ほんまイイ会社やなぁと思いますよ。
面と向かって言えてないですけど、
実は凄い尊敬してます。

伊藤秀一:

過分なお言葉、痛み入ります。

社長がブログでそういうコト書くのって、
ほんまにサエん。
とも言われていたので少し安心しました。

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2006年11月12日 01:09に投稿されたエントリーのページです。

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