その日、午後からは雨になるらしいことは、
朝の天気予報で知っていたけれど、
まあ雨が降り始めてから近くのコンビニで安いビニール傘でも買えばいいや、
と、雨具の用意をすることなく、身軽さ重視で外出したのです。
2件目の訪問先への移動途中で、
案の定、本格的な雨が電車の窓をイッキに濡らしていきました。
都会の駅だし、構内にコンビニでもあるだろうと安易な気持ちでいたけれど、
期待に反して傘を売っている店がどこにも見あたらない。
少し通りを歩こう‥‥と、歩道に出たとたん
大粒の雨が機関銃のように勢いを増して、私の体を攻撃しはじめるではありませんか。
幸い、すぐ先の文具店の店先にビニール傘が陳列されているのが見えました。
助かった。
ところがそこに並んでいたのは異様に小さい子供用。
大人用のジャンプ式コウモリ傘も吊してあるけれど、むむむ。お値段1680円也。
予定購入価格より約1000円も高い。
大事に使うにはちょっとダサイし、価格も中途半端。
セコいソロバン勘定をして店内に入り、主人と思しきオジサンに聞く。
「ビニール傘の大きいヤツはないの?」
『ありますあります、ちょっと待ってください』と奥に引っ込み、待つことおよそ3分。
せせこましい日本人サラリーマン気質が染みついてしまった私は、
アポイントの時間に遅れそうでソワソワしてしまいます。
ようやく奥から出てきたオジサンは、しかし手ぶらでやってきて力無く
『すいません、なんか切らしちゃったみたいで…』と。
ここで深く悩んでいる時間はない。
選ぶこともなく手に取ったモスグリーンの1680円商品を購入。
ムダな1000円出費だったなあ。
文具店を出て数歩進んで再びショック。ななななんと!
ほんの10m先にコンビニの看板。
しかも歩いて横を過ぎるウインドウ越しに見える。あるじゃん、ビニ傘。
たった数秒で返品したくなったけれど、すでに雨天使用済み商品。
悔しい。
訪問先で1時間弱を過ごして次の目的地に急ぐ。
そしたらビックリ。ななななんと!
先ほどの文房具屋の店先に、大きめのビニール傘がギッシリ並べられているのです。
あのオヤジめ。相当なペテン師なのか。ウッカリ者なのか。
めちゃくちゃ悔しい。
そんな思い出の傘なのに、早稲田のオフィスに置き忘れてしまいました。
次の朝も雨。またもう一本入手。
めちゃくちゃめちゃくちゃ悔しい。