リーゼントでデカ顔なのに実はチビなヨシヲ少年は、
ヤンチャで、照れ屋で、スポーツ万能で、ひょうきんで、クラスの人気者。
高校卒業後、両親、実兄とともにクリーニング屋さんを家族で営んでいました。
「オレ、22歳で結婚してーんだよね」というのが口グセで。
思えば、この頃から人生が変わりはじめたのです。
通勤時間はベッドの布団から約5秒、
目覚めた場所が職場だし、シゴトを終えればそこが自宅。
配達以外に家から出ることといえば、近所のコンビニでの買い物ぐらいです。
晩酌用のビール500ml缶を毎晩4本、アテのスルメ。
それからPLAY BOYかGORO(←懐かしい!)。
ときどき飲みに出かける場末のスナックが
ないわけじゃないけれど、ホステスさんに気の利いた話題などは振れません。
カラオケで十八番にしているのは横浜銀蝿かKISS。しかし音痴。
自慢話は、毎度同じヤンキー少年時代の武勇伝ばかり。
聞かされるママさんの愛想笑いも4回目あたりから冷たくなっている。
けれど、それに気づけません。
結婚の目標にしていた22歳などは
瞬時に通り過ぎ、30代も変化のない毎日でした。
自明的に交流もせまくなり、友人といえば、
高校時代までの同級生だけで、ほとんど拡がっていない。
未婚。彼女なし。母・兄夫婦&子と同居。
そんな生活が四半世紀以上続いたわけです。
そのヨシヲ少年がワシに会いに来た。
「おととしオヤジが死んでから兄貴とやっとんだけどこの不況でよお。
カンタンに言ったら兄貴にリストラされてよお。
今喫茶店でバイトしとるんだけどよお。
20も年の離れとる若ぇ店長に怒鳴られてよお。やっとれんくてよお。
いつまでもバイトも何だしよお。早めに独立してよお。
でも結婚したら食ってけんかもしれんでよお」
結婚して小さな喫茶店でもやりたい
というささやかな夢なのに、
なんだかもうはるかに遠大で無謀な夢に聞こえます。
そういう事実が、なんだかとても悲しくなるではありませんか。
これから老いていくオッサンのリアルな姿です。
そういえば、
国政に打って出ようとするあのヒトも、
無計画に刹那的かつ楽しく日々を過ごしているあの親方も、
不況の荒波に歯を食いしばってふんばるあの経営者も、
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PTA会長の挨拶に緊張するあの社長も、
単身ドバイで空港を作っているというあのゼネコンオヤジも、
山登りを趣味にするコンサルタントも、代々の会社を引き継ぐ旦那も、
知人の同世代もいろいろだなあ。
育ちも、学歴も、会社も、職種も、家族も、資格も、安定も、
実はなんにも関係ないのだと実感します。
成功とか失敗なんてのもない。
年とともに、みんなそれぞれ「幸せ」の基準が変わっていきます。
十代までは同じ道を歩いていた仲間も、
個々の選択によって、新たな方向へ歩いていきます。
幸せの価値は、それぞれ同じじゃないのですね。