日中、自転車で客先まで走って行くと、
その帰り道、ゲリラな雨が無防備なワシを容赦なく襲ってきました。
参るなあ。会社まではまだ20分ぐらいか‥‥。
どんどん雨脚は強まって、服を着たまま冷たい泥水シャワーを浴びてる感じです。
急ぎたいけれど、タイヤが滑りまくるので慎重に慎重に‥‥。
何度もコケそうになりながら会社に戻ったときには、
ヨロヨロの帰還兵みたいなもんでした。
「不肖ワタクシ、恥ずかしながら生き長らえ帰って参りました」
ずぶ濡れのワシが言うと、
優しいウメコがタオルを貸してくれました。
「雑巾にするために持ってきてたんでどうぞ」とのこと。
「これ、キミん家ですでに雑巾だったのか?」と、ウメコを疑ったりもしましたが、
それどころじゃないので、ありがたくそれをお借りしました。
シャツだけは着替えがあってよかった。
ひるめし時。
安物のかきあげうどんで冷えた体をあたため、ついさっきの思いがこみ上げる。
チクショー、いつもワシを裏切る雨と天気予報め。
ワシをおちょくりやがって!…と。
しかし、それはまだまだその日の序章に過ぎなかったのです。
夜になり、退社する際、
「今日はもう雨降らないですよ!」というスグルに騙されて
自転車に跨ったのがさらなる悪夢の始まりでした。
会社を出てすぐ、
信号を無視して来たクルマにあわや跳ねられそうになりました。
チャリ通を始めてから最もヒヤッとした瞬間です。
怖かったぁ〜〜〜〜。
そのまま走り去っていったそのクルマに、ワシは大人げなく
恨みのマナザシを向けていました。
…と、憤りながら走った10分後。
ポツポツと雨が落ちてきたかと思ったら、
ものの1分で叩きつけるような雨粒攻撃に見舞われます。
「危険なクルマの次は再び雨のヤローかよ!もうオマエにゃ負けん!」
昼に引き続き、ザーザーと降る雨に打たれながら
必死の形相で夜道の自転車を漕ぐワシ。
「雨のバーローめ!こんちくしょーめ!」
自分の不遇と再度やられた土砂降りの雨に向かって怒ってるワシ。
なんと無意味な行為、愚かな発想、小さな心。
おバカな大雨フラストレーションを抱えつつ
ゴール間近のとある交差点で‥‥、
不自然に停まるクルマとお巡りさんがワシの行く手を塞いでいます。
赤く灯る棒を振り「あっちに避けろ」というような手信号。
ワシは交差点角にあるガソリンスタンドに
エスケープゾーンを見つけます。
ところが、そのガソリンスタンドの地面は、
全面に白い樹脂系の塗装が施されて、この雨でツルツル状態。
ワシは前後輪を滑らせバランスを失い‥‥
ついに初転倒です。
スピードはほとんどでてないかったのですが、
メガネとライトが飛散し、派手な転び方をしたので
お巡りさん数名とかスタンドのお兄ちゃんとかゾロゾロがやってきて
「大丈夫ですか?」「怪我はありませんか?」「痛みはないですか?」
と集まってくる。うひょ〜〜恥ずかしい。
不幸中の幸いで、
ツルツル地面だったのが奏功しました。
軽い打撲で膝が少しだけ痛むけれど、手足を擦り剥くことはなく、
顔や頭も無傷だし、ズボンは傷ひとつもなく、
自転車が破損することもなかった。
すでにずぶ濡れだったから立ち上がって埃を払う必要さえありません。
ダメージがない分、恥ずかしさだけが際立ち、
苦し紛れにお巡りさんと二言三言会話を交わしました。
私「クルマの事故処理でしたか」
警「はい。ついさっきです。雨の夜は多いですね」
私「じゃあ二重事故ですね。20時後半に‥‥、あ、もう21時まわってた。ハ・ハハハ…ハ」
警「大丈夫ですか?」
なんて・・・・、
恥の上塗りなイタい会話を交わすうちに
落ち着きを取り戻し、現場の事故車両をふと目をやってみると‥‥
なぁ〜〜〜〜んと!
事故ってたのは、
オフィス近くでワシを轢きそうになったあのクルマではありませんか。
特徴的なイエローの車体、ひと目で後付けとわかる空力パーツ。
さっきのコイツに間違いありません。
ヒトの不幸を喜んでるようじゃ
ニンゲンができてない証拠でダメダメなんだけれど
正直言って思ってしまったのです。
「ざまあみろ!」と。
すごいオチが待ってたなあ。
散々な目に遭いながら、
交通安全への意識が高まる雨の夜道にビックリです。
自転車を再び走らせると、事故のクルマや雨への怒りが収まった代わりに
昼以上のカラダの冷えがシャツから伝わり、
季節の変化を感じました。
「気を付けよう 暗い夜道と 雨のチャリ」