いつもキザで気取り屋だった
スガタヨシキはその店で
「ダスイとブンタ」と気取って注文をしていた。
ダスイはソーダ水でブンタはセブンスター(煙草)のこと。
今や鮮やかな緑色のソーダ水なんて
ほとんど見かけなくなってしまったけれど、
当時は喫茶店の定番だった。
ダスイとブンタを注文するスガタ、
必ずもらいタバコをするワダ、
テーブルゲーム機の麻雀に
ひたすらカネをつぎ込んでしまうショージ、
ひかる一平似のヤガイ、
親分肌のモッチャン、
190cm超えノッポのキヨシ、
危険な内職を紹介してくれたヤマシタ、
早めに高校卒業しちゃったイッケンとオーカとアツヤ、
そこでずっとバイトをしてた紅一点ヒロミちゃん、
そんな悪友たちが互いに約束することもなく、
自然にクララに集っていた。
思えば当時の光景は、
当時流行ったビーバップハイスクールのまんま。
仲の良いマブダチ(←敢えての当時表現)に恵まれ、
巷で人気のかわいい彼女がいて、
サイコーの人生だと思っていたけれど、
時間に関して言えば、
サイテーのムダ遣いをしていたんだよなあ…。
当時、あの家に帰るのがイヤで
友人宅を放浪していた。
そんな時代に過ごした家も、
今や住む人がなく売却することになり、
なぜか当時のクララの風景が思い浮かんできた。
店のママさんどうしてるかなあ。
まだ元気でいてほしいなあ。
そして謝りたいなあ。
オレたちのせいで客が逃げたはずだよなあ。
我が家も他人に渡り、
クララなんてずいぶん前になくなっている。
一度あの時代のクララに行けたら、
楽しいだろうなあ…。