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2018.10.19

沢田研二ドタキャンで思い出す我が身の講演

ワシは沢田研二氏の曲は好きだ。
CDを4枚持ってたぐらいじゃ
大したことはないかもしれないけど、
それでもファンの一人だ。
その氏がライブ開演直前にドタキャンしたと
朝のニュースが騒いでいた。

スーパーアリーナだったら
7000名はスカスカに見えるかもしれない。
それでも全然少なくない。
9000人のつもりだったのが7000人だったって。
それなら上等なんじゃないの?
意地があるって言うなら
スカスカでやり通す意地もあったはず。
まあ大物スターの気持ちには
なったことがないので
氏の意地の通し方はわかんないけれど。

それで自分のことを思い出した。
もう十年以上前のことだ。

ワシはとあるNPOの依頼を受け、
大学で就活をテーマにした講演をする予定だった。

NPO職員が最寄り駅で出迎えてくれ、
いざ会場校に行ってみると、
学校の担当者を相手に
NPO職員が激しく議論しはじめた。

しばらくして、
ワシのところに申し訳なさそうな
顔をした関係者らがゾロゾロやってきた。

「すみません。十分な募集告知ができておらず、
聴講者が非常に少ない状況でして‥‥」

そんなことはまあ仕方ない。
10名程度の小さな講演だってたくさんある。

「い、いやその。え〜と、その、、、
今会場に来ているのは、あの、1名だけなんです」

「は?」

ワシが事前に聞いていたのは
会場は100名の講義室で
だいたい50~60名ぐらいの参加者と…。
1名ってのはナニ?

なめられとるのか?
ワシの設定したテーマは
この大学の学生には
まったく響かなかったってこと?
そもそも募集したの?
たった1名の参加者だって
関係者つながりのサクラなんじゃねーか?
憤りが収まらない。

だけど、その参加者は
どこかで聞きつけてやって来た
正真正銘の聴講者だった。

せっかく来たその学生に失礼だ。

それでもたった一人、
何らかの方法で講演のことを知った学生が
会場に足を運んでくれたんだ。
その学生の時間をムダにしたらアカン。
講演を行なうという約束は約束だ。
ワシは小さなテーブルにパソコンを置いて
膝を詰めてその学生に向かって語った。
たった一人のために
時間どおりに話を進めた。

今思い出してもひどい話だ。

後に、大学広報はナニもしてなかった。
NPO職員はその確認を怠った。
当日になるまで講演用の部屋さえ
用意されていなかった。
クソむかつく話だ。

だけど、
これは沢田研二とワシの差だ。
意地を張る場所が違う。

伊藤秀一『いい会社はどこにある? いい人材はどこにいる?』

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