□古い建物に価値はない?日本のビル建築事情とは

□建築・不動産業界で広がる「既存建造物長寿化」の取り組み
古い建物に価値はない?日本のビル建築事情とは

日本は地震が多いなどの理由から、欧米と比較して古い建物の需要が低くなっています。建材の種類にもよりますが、多くのビルは竣工後から長くてもおよそ40~50年後で建て替えられているのです。しかし、実はビルが40年以上経つとボロボロになるというわけではありません。適切なメンテナンスを行うことで100年以上活用できるとも言われています。

 

しかし築年数が長くなるほどビルの価値は下がっていくのに対し、長期的なメンテナンスが必要になれば運用にかかるコストは嵩んでいくばかりになってしまいます。そのため、多くのビルは一定の築年数に達すると建て替えられるのです。

 

この方式を「スクラップ&ビルド方式」と言います。

建築・不動産業界で広がる「既存建造物長寿化」の取り組み

新しく建造物を建築するたびに資源を消費し、CO2を大量に排出します。そして時間が経ち、建造物を建て替えると廃棄物が発生し、また新たな資源が必要となり、CO2排出に繋がるというループが生まれてしまいます。

 

この繰り返しを断ち切らなければ資源は減っていくばかりになり、CO2削減も実現できません。この課題に立ち向かうために、建築業界では既存の建造物を長寿化させる取り組みが始まっています。

 

ここでは「建造物長寿化」に関する事例を3つ紹介します。

株式会社竹中工務店

 

日本において「スクラップ&ビルド方式」が採用されていたのは、前述のしたように建物の老朽化によって地震などの自然災害での倒壊リスクが高まるためです。建造物の長寿化のためには建物の耐震性や耐火性などを維持し続ける必要があります。

 

竹中工務店ではAIやドローンを活用した独自の調査技術を活用し、長期的に建物の性能を維持するための提案を行っています

株式会社淺沼組

 

株式会社淺沼組は100年以上かけて培った設計・施工・維持管理・調査のノウハウを生かし、建造物の長寿化に向けた提案を行っています。

 

自社の技術を活用してリニューアルした名古屋の新社屋は、既存の建物を生かして設計されています。通常は廃棄される建築残土を資材として使用したり、外観デザインに吉野杉を活用し、将来的に交換可能な素材として設計するなど独自の工夫が施されています。

東新住販株式会社

 

主に関東圏でのマンションや戸建て住宅の企画・設計や販売を行っている東新住販株式会社では、既存のマンションや社宅を再生して販売する「再生マンション事業」に取り組んでいます。

 

不要となった社宅などを取得しマンション全体を補修することで、マンション建築にかかる廃棄物やエネルギーを削減することができます。もちろん、棟全体の安全性能を高めることもできます。

このほかにも既存建築の長寿化に向けた取り組みは多くの建築・不動産関連企業で実施されています。
これからは「見覚えのある建物がなくなって新しくなる」のではなく、「見覚えのある建物のままで新しく生まれ変わる」時代がやってくるのかもしれません。

※記事作成 ​​2021年11月時

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こちらの記事は 2021年11月17日に公開しており、
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