採用競合に負けない肝は
社員のドラマにあり
ノーコンペで託された
トヨタの現場の魅力抽出
採用競合に負けない肝は社員のドラマにありノーコンペで託されたトヨタの現場の魅力抽出
トヨタ自動車株式会社様(愛知県豊田市)
企業規模:1,000名以上
制作内容:A4 16P
●採用課題
トヨタ自動車では国内外問わず意欲的に活躍してくれそうな文系学生を探していました。
ターゲットとなる学生の多くは、大手総合商社や、大手ゼネコンなども視野に入れて就職活動しています。同社は中部エリアでは絶大な人気を誇る企業ではありますが、他の地域からくる学生からの印象は今ひとつ。世界に名だたる大手といえど、都会の大手商社と比較するとグローバルな魅力が見えづらいようでした。
同社社員が世界の市場とどのように向き合っているのかを示し、グローバルな視野を持った学生に魅力をアピールしていく方法を探りました。
●採用ターゲット
大手総合商社に興味のある学生
●ジオコスからの提案
POINT1 仕事説明ではなく、働く人たちのエピソードを伝える
海外でも活躍できる仕事に就きたいと考える学生の志望動機を高めるために、社員紹介を工夫しました。
この部門に勤めて、こんな業務内容の中で、こんな仕事をしていて充実しています…という紹介では、そもそもその部門に興味のない学生はその内容を読み飛ばしてしまう上、仕事の面白さが伝わりにくくなってしまいます。
部門や業務内容の紹介は本文中でも必要最低限に留め、実際に働く人のエピソードを深掘りする内容を多く載せました。
POINT2 この企業でしかできない体験を”見出し”で伝える
エピソードを深掘りしていくと、人知れず積み重ねられた苦労や、想定外のトラブルなどの実情も必ず見えてきます。
世界で活躍すると言っても、サンパウロのスーパーの駐車場で、慣れない片言のポルトガル語を使い現地の主婦に乗っている車について突撃インタビューする、なんてことを想定している学生はおそらくほぼ居ません。
華々しい成功談だけではなく、その裏にある泥臭い努力や、苦渋を味わった経験も見せていくため、本文の内容はもちろん、見出しについてもそのエピソードのキモが伝わるようなコピーにしました。
POINT3 入社後の覚悟感と成長感を感じさせる
従来掲載されていた企業理念、海外で働く日本人社員の主な活躍、そしてキャリアアップしていった社員の遍歴の一覧に関しては、新しいパンフレットでは掲載していません。同社が海外にも名の知れた企業であることは言うまでもないので、海外で働いている社員がいることは想定内です。企業理念に関しては、採用情報ページを見れば分かる上、同社を志望する就活生のほとんどは事前の企業研究でその内容を頭に叩き込んでいるので割愛しました。
キャリアアップ遍歴に関しては、社員紹介エピソードの中に組み込んで紹介。「自分もこの先輩のように活躍したい!」と思わせるよう、苦労話だけではなく、その苦労があったから成長できて、現在はこんなに楽しく仕事をしているのだと伝え、学生の志望動機を高められるような構成にしました。
POINT4 選考で読書会。学生の感想が選考基準に
選考前にパンフレットを学生に渡し、内容をしっかり読み込んでおくようにアナウンス。選考の際にパンフレットを読んだ感想を聞いてみることで、その学生がどんなところに着目しているのかがわかります。自由度が高くて楽しそうだとか、夢のあるエピソードにばかり目がいく学生ではなく、仕事をする上でどういう苦労があるのか、どれだけの覚悟を持っているかを見極め同社の求める採用基準に達しているかどうか、パンフレットを用いてふるいにかけることができるのです。
片言のポルトガル語で
「クルマを見せて」と主婦に話しかけた
サンパウロの駐車場突撃市場調査
企画のネタは、お客様の声にある。
クルマのコンセプトをつくる商品企画は、一台のクルマのターゲットユーザーやデザイン、性能、装備、価格をどうするかを、マーケットに根差した事務系の視点でエンジニアの人たちと議論・検討することが求められているます。
入社後、IQやイストなどの小型車担当になりました。クルマを知らない私が、配属されてすぐに企画業務をできるわけありません。でも、やるんです。調査と分析を繰り返し、なぜこのターゲットで、この価格で、この装備なのかという理由を模索し続けてますが、当然全部上司にダメ出しされます。
企画で最も大切なのは市場環境・お客様嗜好の先読み。実際に販売店さんに行き、お客様がどこに魅力を感じたのか、競合車との差は何かなど、データベースにない情報の手がかりを探します。その中で「ターゲットユーザーである若者は個性/自分らしさを最重視している」という声があれば、「新型はスタイルを重視する」などと企画に落とし込みます。言うのは簡単ですが…。
スーパーの駐車場でブラジル人に話しかける。
入社4年目。研修で1年間ブラジルトヨタに行かせてもらいました。大学時代に中南米を学んだ私がずっと待ち望んだチャンスです。
現地赴任の直後、私はブラジルの市場データを調べ、毎月レポートを日本に送っていました。でも上司は「臨場感がない」とあっさりいいます。それで気付きました。やはり、現場にしか情報はない!と。そして私は、幹線道路を走るクルマのカラーを定点集計しました。知人の路上教習車に同乗してヒアリングしました。スーパーマーケットの駐車場では、勉強中のポルトガル語で買物客に声をかけて、カゴの中身や車の荷室の使い方を見せてもらいました。警備員さんからは何度も「何してる?迷子か?」と怪しまれましたけどね。
その結果から見えたのは「安全」という要素の重要性。ブラジルのスーパーではほとんどのクルマでトランクに荷物が積みこまれています。なるほど。日本への報告書では「購入量を問わず、荷物は基本的にトランクに積み込む。理由は、助手席など見える範囲に置くと狙われやすいという防犯意識の現れ」と自分なりの解釈を加えるようになりました。机上の分析じゃなく実感値を込めた洞察です。